『ウォーキング・デッド』とのコラボが物議を醸す
さて、今日は何かと話題の『Secret Lair』についてのお話です。
先日、『Secret Lair』シリーズの最新作となる『ウォーキング・デッド』とのコラボ製品の情報が公開されました。コラボすること自体は前々から明かされていましたが、公開された情報が物議を醸しています。
その火種となったのは、今回の『ウォーキング・デッド』コラボ商品に収録されるカードはいずれも新規カードであり、エターナルフォーマットで使用可能な形で収録されている点です。これまで、『Secret Lair』はコレクター向けの商品として展開されており、いずれも新規アートでの再録という形が通例でした。それが今回、全くの新規カードが『Secret Lair』に収録されるということで話題を呼んでいます。
賛否両論ありますが、国内外のネット上での声を拾う限り、反対意見の方が多そうです。意見をまとめると、ざっくり2つの要素に分けることができます。
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1. マジックの世界観を壊す
他作品とのコラボは、「マジックの世界にないものを取り入れる」ということです。他TCGでいえば、当初から多くの作品を取り入れるプラットフォームで立ち上がった「ヴァイスシュヴァルツ」や『Reバース for you』などとは異なります。いくら多元宇宙を舞台ととしたマジックといえど、これらのTCGのようにはいきません。
しかし、案が無いわけではありません。多くの方がご存じの通り、マジックでは以下の方法を用いることで、度々他作品とのコラボレーションを実現してきました。
まずは『ポータル三国志』です。
他作品...というよりかは歴史とのコラボですね。入門向けセットを丸ごと「三国志演義」をモチーフにしたセットとして売り出しました。
1999年発売当時、こちらもやはり反対意見は多かったです。その独特な世界観と、使用できる公式フォーマットが存在しなかったため、あまり売れ行きの良いセットとは言えませんでした。今でこそ人気セットとなっていますが、エターナルフォーマットでの使用解禁と、EDHという新たな遊び方が誕生したことが主な理由です。
続いては『銀枠カード』です。
『アングルード』で登場した銀枠カードは、ジョークカードの証。公式フォーマットでは使用できないカードのため、何をしても自由です。
例を挙げると、2017年のHasconで限定販売されたセット:『Hascon exclusive』では3枚のコラボカードが含まれていました。「トランスフォーマー」とのコラボカードである《Grimlock, Dinobot Leader》、「Dungeons & Dragons」とのコラボである《Sword of Dungeons & Dragons》、そしてシューティング玩具:「ナーフ」とのコラボである《Nerf War》が登場しました。他にも最近では「マイリトルポニー」とのコラボ商品もリリースされています(関連記事)。
最後は、『イコリア:巨獣の棲処』で採用された「ゴジラシリーズ」です。
他のカードの別バージョン、いわゆる「パラレルカード」としてコラボを実現させています。今年に入ってからリリースされたセットのため、コラボといえばこの方式を思い浮かべる方が多いと思います。
あくまでもパラレルカードなので、コラボカードを使いたいプレイヤー、使いたくないプレイヤーの双方に選択肢を与えているナイスアイディアです。また、コラボ先の固有名を与えないことによって、他セットでの再録ハードルを下げるというメリットもあります。たとえば、《超音速女王、モスラ/Mothra, Supersonic Queen》のままでは他セットでの再録はよほどのことが無い限り難しいですが(版権面でのハードルもある)、元カードは《光明の繁殖蛾/Luminous Broodmoth(IKO)》なので、後日再録の予知を残しています。
上記3つの例からすると、『ウォーキング・デッド』という作品とのコラボ自体はやりようはあると考えられます。
ただし世界観という面では、例え役柄だとしても、実在する俳優を黒枠でカード化してしまったのが受け入れられない、という方が多いのではないでしょうか。「ダリル・ディクソン」といいつつも、アートは俳優の「ノーマン・リーダス」ですから。ウォーカー(劇中におけるゾンビと捉えてください)の方をカード化していれば、この「世界観が崩れる」という声は少なかったかもしれません。
とはいえこちらは「受け入れられるか」「受け入れられないか」、という感覚的な話でもあります。私個人としては、『ウォーキング・デッド』という作品は好きですが、実在する俳優が黒枠で収録…という点については抵抗感があることも確かです。
2. 『Secret Lair』に新規カードを収録するな
『Secret Lair』に新規カードが収録される―。多くの不満のうち、一番の核心はここではないでしょうか。
冒頭でも述べましたが、これまでの『Secret Lair』シリーズは既存カードのアート違いのものをセットにした商品でした。2019年からはじまった『Secret Lair』ですが、第1弾となる「Bitterblossom Dreams」などが販売された当初から、「まさか将来新規カードを刷ったりしないよな」と危惧する声は少なからずありました。この不安はわずか1年も経たないうちに的中したことになります。
問題は、『Secret Lair』がフラッシュ・セール方式を採用していることにあります。
エターナルフォーマットで使用できる新規カードを、24時間限定で売る(アイテムによってばらつきはありますが)。『Secret Lair』はコレクター向けの商品としてユーザーは認識していて、自分のこだわりの範疇で「買う」「買わない」を選択できた商品だったはず。しかし、ここへ来て「買わざるを得ない」状況に。
ちょっと様子を見てから後で買う…ということができないため、「強そう」と感じたらとりあえず買わなければならない。一種の圧力のようなものを感じた方も多いと思います。
その他、この『Secret Lair』製品を公式サイトから購入できない国もあります。
それらの国のユーザーは第三者…つまり別のユーザーや、あるいはショップを通して入手しなければなりません。こうした商法を続けてしまうと、特定の国のユーザーがハンデを背負うことになりかねず、多くのマジック・コミュニティがこの問題を危惧しています。
ユーザーの声に対する回答
ユーザーの声を受け、「Blogatog」にていくつかの疑問に対しての回答が掲載されていました。
まず銀枠カードとして収録しなかった理由は2つ。
●なぜ銀枠での収録ではないのか?
(1) 通常の黒枠のように使える「ウォーキング・デッド」のキャラクターのトップダウンデザインを作りたかった
(2) 銀枠カードは黒枠カードに劣るように見られがちのため、銀枠で作りたくはなかった
そして、ゴジラシリーズのような代替名を与える形にしなかった理由は以下のように述べられていました。
●なぜゴジラシリーズのようなデザインにしなかったのか?
ビジュアル的な観点から。『イコリア:巨獣の棲処』とはことなり独立した商品として販売するため、余計な装飾を加えず、魅力を最大限に引き出したかった。
また、今後必要に応じてコラボカードと同等の能力を持ったカードを再録することが可能。これはゴジラシリーズの方式の逆バージョンであり、オラクル上全く同一のカードとして取り扱うので、コラボカードを入手したプレイヤーが将来的に4×2種類の8枚体制でデッキを構築できるわけではない。
本当なのか後付けなのかはわかりませんが…。
一応、今回の新規カードはオラクル上で同ーカードとして取り扱う形で再録が可能なようです。今回のコラボ商品を逃しても、一応他の手段で同等の能力を持ったカードを手に入れる機会はありそうですが、「具体的にいつ」とは述べられていません。通常セットなのか、はたまた数年後なのか…。先のことは何も見えていないので、結局渋々買わざるを得ないというプレイヤーも多いはずです。
せめて、同様の能力を持ったカードは次のセットでの収録を予定していて、先行収録という形を取っていれば(そしてその情報を開示していれば)、同じ売り方をしても販売形態に対する印象が随分違ったのではないかと思います。色々なやり方があったとは思いますが、もっとうまくやれば、より多くの人に受け入れられる形で売ることができたはず。個人的には、ビジネスとして勿体ないなと感じました。
国内外で話題を呼んでいる『ウォーキング・デッド』とのコラボ。大きなマジック・コミュニティも声明を出すほどです。
あなたは買いますか?買いませんか?