【Landiary-37】誰ガ為に罰則はあるのか:渡辺選手の出場停止処分から一夜明けて

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はじめに

 

昨日、マジック界に大きな衝撃が走りました。

日本を代表する強豪プレイヤーである渡辺雄也選手についてのアナウンスです。同氏は「ミシックチャンピオンシップ:ロンドン2019」においてデッキのスリーブが区別できる状態にあったことから失格処分を下されたばかりですが、MPL(Magic Pro League)は調査の結果、渡辺選手を30か月間のDCI認定イベント出場停止処分とし、MPLおよびマジック・プロツアー殿堂から除名することを発表しました。

これまでの出場停止選手の罰則を見てみると、30か月間のサスペンドというのは非常に重いものです。

 

 

いちサイトの管理人としては、このような事案に「個人としての意見を述べる」ことは非常にリスキーなことだとはわかっています。不特定多数のユーザーの目に留まるSNSサービスを使っている方ならイメージが沸くかもしれませんが、ひとつ意見を述べると、必ず「敵」が現れるからです。

 

例えば、私が「赤くて甘いイチゴが好き」というひとつの意見を述べたとすると、

「すっぱいイチゴは不要だということか!」
「それじゃあリンゴは嫌いということか!リンゴ農家に謝れ!」
「イチゴを頻繁に食べるなど贅沢ばかりしやがって!」

 

…など、どのような角度からでも批判が飛んでくる可能性があります。「君子危うきに近寄らず」という言葉もあるぐらいですから、サイト管理人としては「ひとつのニュース」として事実だけをポンと伝え、アクセスを稼ぐ…というやり方が一番美味いのはわかっているのですが、どうしてもモヤモヤが治まらないため、迷った末に筆を取ることにしました。お時間のある方だけお付き合いください。

 

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なぜ、これほど反響が大きいのか?

 

世界中で反響が大きいこのニュースですが、なぜここまで大きな混乱を招いているのか、その理由を整理しました。ざっくりとジャンル分けすると、大きく3つに分かれると考えています。

 

(1) 渡辺選手のこれまでの功績

まず一つ目は、渡辺選手が日本のマジック界をけん引する人気プレイヤーだということです。同氏が日本のマジック界に与えた影響・そして功績は素晴らしく、クリーンなイメージも強い。ファンも多い超人気プレイヤーなため、「彼ががイカサマなどするはずがない」という声も大きいです。

 

(2) 件の失格プロセスにおいて、クリアになっていない部分がある

結果的に、渡辺選手のデッキの一部のカードがマークド(判別できる状態)になっていたのは事実です。しかし、度重なるデッキチェックが行われているのにも関わらず、当該のタイミングまで発見されていなかったのは不思議です。故意のマークド/偶然的に起こったマークドなのかは、水掛け論になるため現状証明する手立てはありません。この辺りがクリアになっていないため、界隈では他にもスリーブにアクセスできた第三者の手によって…といった意見・推測も出ています。

 

(3) 公式アナウンスにおいて、出場停止処分の理由がクリアにされていない

そして、多くの方が引っかかっているのはココですね。(2)と関連する部分でもあります。公式アナウンスの発表では、結果を簡潔に通達するのみで、その処罰・処分を決定するに至った調査経緯やプロセスは明らかになっていません。何故このような処分が下されたのか、「その理由を明らかにしてくれないと納得できない」という声が大きいです。

 

 

『誰ガ為に』罰則はあるのか?

 

Twitterでも発言していたように、私は「ウィザーズ社が出場停止処分のエビデンスやプロセスを公開しないのは、判断に値する材料を既に握っているものの、その不正ノウハウを拡散させないようにするためなのではないか」と考えていました。テレビ番組などでは鍵のピッキングのプロの特集などが組まれたりしますが、テクニカルな部分はよくモザイクが掛かっていますよね。また、スマホゲームなのでアカウントがBANされる場合、対策が取られないようにその詳細な手口は公開されないケースがほとんどです。

 

Twitterでつぶやいたあと、皆さんからの意見を頂くうちに私が気になったのはそもそものルール。

ルールに抵触してしまうプレイヤーが現れたとき、ウィザーズ社はどういった指針で処罰を決定し・発表しているのだろうと疑問に思いました。そこで、普段は読むことはないのですが、「マジック違反処置指針」に目を通してみました。

 

項目:「1. 一般理念」より抜粋

(中略)

懲罰の目的は、そのプレイヤーが同種の誤りを将来犯さないようにすることである。そのためには、どの行動がルールやポリシーに抵触しているのかを説明し、教育のために必要なだけの懲罰を与える必要がある。また、懲罰は、そのイベントに参加しているその他のプレイヤーに対する抑止力や教育として、そしてプレイヤーの行為を追跡するためにも用いられることがある。

 

…なるほど、懲罰の一番の目的は、同じ過ちを犯さないように教育すること。そのためにどこが悪かったのかを教えてあげて、教育に必要な分だけの罰を与える、と定められています。恥ずかしながら、私はこの一般理念を知らなかったです。この前提があるとすると、現在の裁定・アナウンスは「渡辺選手の教育のために、どこが悪くて、どこを治せばよかったのかを説明する」という義務を全うできていると言えるでしょうか…?

 

さきほどのピッキングの事例のように、もしもノウハウの流出を恐れているのであれば、せめて当人にだけでも通達するなどのやり方はあるのではないか、と考えてしまいます。

 

 

『紙のマジック』の未来を見据えて

 

現状、今回の出場停止処分は通常のものとは異なり、明確になっていない部分が多いです。いくら声を荒げても、もうこれ以上のアナウンスは出てこないのかもしれませんし、件の真相はハッキリしないまま終わってしまうのかもしれません。

 

ただ、私が知りたかったのは「これからの紙のマジックがどうなるのか」ということです。

例えば、「今のデッキチェックのシステムはこういったプロセスです。この仕組みではこういった問題・課題があるのでこの解決に一丸となって取り組み、公平かつ安全に紙のマジックがプレイできる環境を整えていきます」ですとか、「今のデッキチェックはこういうエビデンスを残しているので、不正はできませんよ。安心してください」といった多くのユーザーに向けてのアナウンスがあればよかったのになと思います。

 

多くの人が声を荒げている根底には、「このまま紙のマジックを安心してプレイできるのか?」という不安があるのではないでしょうか。マジックは世界でもトップレベルの競技性を持つと謳うTCGですから、このまま「紙のマジックをプレイする場合、物理的に/競技システム的にリスクがある」というイメージのまま終わるのは喜ばしいことではありません。(もちろん、今回の件が渡辺選手の故意によって引き起こされたというものであれば、この議論からは外れるのですが)

 

今回の問題がどう着地するのかはわかりませんが、世界中のプレイヤーが安心してプレイできる環境になることを願うばかりです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

p.s. カードサプライのメーカーさんへ

大きなビジネスチャンスだと思います。単価が2倍・3倍になってもいいので、パック内でのサイズばらつきの低減、折れに対する耐性、その他外傷に対する耐性など、競技レベルでの使用に特化したスリーブをどうか。カードスリーブというものが誕生して長いですが、「このスリーブを新品で使えば安心だよ」という品質のものは未だに出てきていません。

マークドの故意性や大会でのチェック体制とは別枠で考えて、偶発的な物理要因で発生しうるリスクを低減できるような、自衛に使える商品が生まれてくれたら嬉しいです。

 

 

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