プレイヤーズツアー:名古屋2020を制したのは
原根選手、「プレイヤーズツアー:名古屋」優勝おめでとうございます!
世界初のプレイヤーズツアー:名古屋は、原根選手が駆る「バントスピリット」が制しました。個人的に白青系のスピリットデッキは「押しているときは強く、攻め込まれると弱い」系のデッキだと思っていたので、今回のプレイヤーズツアーにおいてここまでの活躍を見せるとは正直予想していませんでした。本当にすごい!
では、一体どんなデッキを使ってプレイヤーズツアーを制したのか。
まずはデッキリストを見て頂きたいのですが、「バントスピリット」と謳いつつも、基本的には「白青スピリット」の形です。メインボードにおける「緑成分」はカンパニーこと《集合した中隊/Collected Company(DTK)》のみ。しかしサイドボードに目を向けてみると、何やら見慣れないクリーチャーが...?
スポンサーリンク
デッキリスト
バントスピリット(パイオニア) by Kenta Harane
Creatures (32) 4 Mausoleum Wanderer 2 Spectral Sailor 4 Rattlechains 4 Selfless Spirit 4 Supreme Phantom 4 Empyrean Eagle 4 Nebelgast Herald 4 Spell Queller 2 Brazen Borrower Spells (4) 4 Collected Company | Lands (24) 2 Plains 2 Island 4 Hallowed Fountain 4 Glacial Fortress 4 Temple Garden 4 Breeding Pool 4 Botanical Sanctum Sideboard (15) 2 Permeating Mass 4 Deputy of Detention 1 Archangel Avacyn 2 Rest in Peace 1 Disdainful Stroke 4 Mystical Dispute 1 Settle the Wreckage |
◆日本語リスト
【クリーチャー】
4 《霊廟の放浪者》
2 《幽体の船乗り》
4 《鎖鳴らし》
4 《無私の霊魂》
4 《至高の幻影》
4 《天穹の鷲》
4 《ネベルガストの伝令》
4 《呪文捕らえ》
2 《厚かましい借り手》
【スペル】
4 《集合した中隊》
【土地】
2 《平地》
2 《島》
4 《神聖なる泉》
4 《氷河の城砦》
4 《寺院の庭》
4 《繁殖池》
4 《植物の聖域》
【サイドボード】
2 《蔓延するもの》
4 《拘留代理人》
1 《大天使アヴァシン》
2 《安らかなる眠り》
1 《軽蔑的な一撃》
4 《神秘の論争》
1 《残骸の漂着》
気づけなかった《蔓延するもの(EMN)》の強さ
そう、《蔓延するもの/Permeating Mass(EMN)》です。トーナメントシーンにおいてほとんど見かけることのなかったカードですし、記憶にない方も多いのではないでしょうか。
能力としては、「このクリーチャーが他のクリーチャーに戦闘ダメージを与えると、そのクリーチャーは《蔓延するもの》のコピーになる」というものです。このカードを介した戦闘の応酬により、自分と相手の戦場に《蔓延するもの/Permeating Mass(EMN)》が増えていく動きは、まるでウイルスのような振る舞いです。
『異界月』でこのカードを初めて見たとき、このカードを使えば戦場が面白いことになるな、程度の認識はありました。しかし、何かしらの強化手段や、プロテクションの付与などを絡めない限り有効利用はできないと考えました。下準備が必要であり、その労力に見合うだけのリターンは少なく、正直なところプレイアブルなカードではないと判断していたのです。
そんなカードが、パイオニア環境の「バントスピリット」の中に居場所を見つけたと知って、非常に驚きました。本当に!?あの《蔓延するもの/Permeating Mass(EMN)》が?
半信半疑でしたが、動きを見て、「バントスピリット」におけるこのカードの強さと重要性に気づかされました。
《蔓延するもの/Permeating Mass(EMN)》は、クリーチャーを横に並べて攻め立ててくるデッキに対しての抑止力です。これが立っている相手にアタックするには、自軍のアタッカーの大幅な弱体化を余儀なくされます。ウイルスのような動きで多くのクリーチャーに影響を及ぼすのがミソで、攻めれば攻めるほどアタッカーが1/3という打点の低いクリーチャーへ変わってしまいます。
相手の攻撃を完全封殺というわけにはいきませんが、地上のクリーチャーに対しては相当な抑止力となります。相手の地上のクリーチャーを足止めしつつ、こちらはスピリット達で悠然と空から殴る。この足止めの役割をわずか1マナという破格のコストで担ってしまいます。また、(私も今回初めて知ったのですが)この《蔓延するもの/Permeating Mass(EMN)》は「スピリット」なので、《至高の幻影/Supreme Phantom(M19)》による強化サポートを受けることが可能です。勝ち筋をフォローする面でも、デッキの弱点を補う面でも、どちらにもフィットする素晴らしいカードでした。
このカードの強さを見抜けなかったことを悔しく思うと同時に、トーナメントシーンの最前線で戦うプロ達の観点はレベルが違うなと感心しきりです。原根選手、この度は優勝おめでとうございます!