【翻訳記事】The Silver Showcaseとプロ・マジックの現実(前編)

投稿日:

 

プロ視点から見た<The Silver Showcase>

 

「TCG PLAYER.COM」に寄稿しているBrian Braun-Duin氏によるコラム。
プロ視点から見た<The Silver Showcase>に対する考え、そしてプロ・マジックの実態がここに。
ざっくり意訳なので注意。

 

【原文(TCG PLAYER.COM)】
  The Silver Showcase and the Realities of Pro Magic

 

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翻訳①(The Silver Showcase and the Realities of Pro Magic)

 

2017年9月、ウィザーズ社は「2018年の8月、ミネアポリスのチームプロツアーと並行してエキシビジョン・イベントを開催する」とアナウンスした。このエキシビジョン・イベントでは総額150,000ドル余りの賞金が獲得できるとあって、当然ながら多くの選手が大興奮。このイベントはプロツアー本選とは別の大会であり、非常に壮大なイベントになるはずだったんだ。もともと「プロツアー本選と並行して開催する」とアナウンスされていたから、僕自身は参加できないと思っていたけれど、僕は非常に楽しみだった。

 

そして木曜日。ウィザーズ社はこのイベントがどのようなものか、詳細を発表したんだ。
そう、「INTRODUCING THE SILVER SHOWCASE」としてね。

 

このアナウンスに対する多くのプロ・プレイヤーの反応は、否定的なものが多かった。マジック・コミュニティで有名なMike Sigrist氏(長いことマジックをプレイしているプレイヤーであり、プロツアーやグランプリで輝かしい功績を残している)のツイートを例に挙げよう。

 

【Mike Sigrist氏のツイート翻訳】

●マジック・プレイヤー「私はいつもマジックをプレイしていて、そのために世界中を飛び回っています。もっと賞金を頂けませんか?」
●Wotc「総額150,000ドルの賞金が出る大会があるよ!」
●Wotc「トップ10に入るプレイヤー数名と、マジックをプレイしない人を招待するよ!」

 

 

プロのマジック・コミュニティがこの発表に対し不満を感じたということに、驚いたプレイヤーも多いはずだ。それだけ界隈での反応は大きかった。だが、結局のところ、彼らは一体何が不満だったのだろうか?…それは、この大きなイベントが「チャリティによる寄付金で賄われたもの」であり、そして、「限られた8人のプレイヤー」による大会だったからだ。

 

一見すると、この大会は素晴らしいものだ。「ベータ」「レジェンド」「アンティキティー」「アラビアンナイト」といった古いセットを使用したロチェスター・ドラフト。このドラフトを素晴らしいものにするために、生涯プロポイントを最も稼いだプレイヤーを招待する…これは素晴らしい案だと思う。ドラフトに使用するセットは発売以来、マジックを象徴とするのようなものばかりで、クラシックなドラフトスタイルを実現している。今回のフォーマットはマジックの「ゲームの歴史」をカプセル化しており、その素晴らしいゲームを熟練のプロが披露する…というのは素晴らしい考えだ。

 

…とここまでは良かったのだが、発表記事はこの地点を過ぎると雲行きが怪しくなってくる。多数のプレイヤーが不満を持ったのはここで、ウィザーズ社が「残る4つの席に、マジック・コミュニティに大きな貢献をしていないプレイヤーを選んだこと」だ。確かにBrian Kibler氏は殿堂プレイヤーだったが…。プロツアーで勝利を収めたStanislav Cifka氏と同じように、より条件のよい「ハースストーン」プレイするためにマジックから遠ざかったプレイヤーだ。その他を見てみると、Amaz氏は有名なハースストーン配信者ではあるがマジックは最近始めたばかり。そして、David Williams氏はプロツアーで長年プレイしていたプレイヤーであるものの、現在はプロのポーカープレイヤーとして有名だ。

 

この大会はマジック25周年を祝うためのもののはずだ。しかし、Kai Budde氏、Gabriel Nassif氏、Luis Scott-Vargas氏といった最高の殿堂プレイヤー達の代わりに、ウィザーズ社は他のゲームのためにマジックから引退した人物や、マジック以外のキャリアで有名な人物を招待すると決めた。これはつまり…「マジックにおいて多額の報酬を獲得するには、マジックを辞めて他の手段・他の場所で有名になろう!」ということだ。

 

この大会(Silver Showcase」の最低賞金(5~8位)は12,500ドルで、その金額は、「グランプリで優勝」「プロツアーでトップ8に入賞」した場合よりも多い。この大会はこれまでのどんな大会よりも一人当たりの賞金額が高く、そして参加プレイヤーの半数はマジックではなく「ハースストーンの」プロだ。

 

マジックのプロプレイヤーの多くは、お金のためにマジックをプレイしているわけではない。例えば年間15,000ドルを稼ぐプラチナ・プロがいたとして、その収入を考えてみると、マクドナルドで働く場合よりも少ない。更に、彼らは数少ないプラチナ・プロになるために、イベントに参加するための旅費、食費、宿泊費を払い続けなくちゃならないんだ。僕の場合は世界ランク16位だけれど、プロの得点(収入)と大会の賞金を合わせて、ようやくトントンか、僅かに収入の方が上回るぐらいなのが救いだ。

 

別に僕の不幸話をしたいわけではないよ。僕はウィザーズ社からプロとしてマジックをプレイすることを強要されているわけではないからね。もちろん、このプロ・システムに不満を持つプレイヤーは、いつでも辞めることができる。僕はゲームが好きで、大会に参加するのも好きだから、もちろん辞めていない。基本的に僕は満足のいく生活のために、コンテンツ制作でお金を稼いでいる。そして、大会に出てたまに大金を稼ぐというわけさ。僕は非常にラッキーだし、このライフスタイルで暮らすにあたり、とても恵まれている。

 

よくわからないけれど、とにかく僕は食っていくため、生きるため、眠るため…そして金持ちになるためにマジックを続けているわけではないんだ。僕がプレイするのは、ただ「マジックが好きで、熱中しているから」だと思う。

 

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翻訳②(The Silver Showcase and the Realities of Pro Magic)

 

実際のところ、プロツアーでは参加者の大半が多くの収入が得られないにも関わらず、多くのプロがマジックに対して人生の大半を捧げ、プロツアーに夢を馳せている。それは彼らがマジックが好きだからに他ならないが…。もっと大会が大きくメジャーになれば、プロに対する収入も増やせるはずだ。しかし、マジックが大きく成長しても、ウィザーズ社はそうはしない。しかし、我々はこのシステムが改善されることを願って、今もしがみついている。こんな状況だから、プロたちは今後の大会の行く末と、ウィザーズ社の対応を心配している。

 

ウィザーズ社がマジック25周年を祝うためのエキシビジョン・イベントを大々的にアナウンスするも、最終的にマジックに関係ないプレイやーを招待。しかも多くのプレイヤーが1年間に稼ぐ金額よりも多い賞金が支払われる…うーん、一体どういうことなんだろうね、これは。なぜ最高峰のプレイヤーの一人、Kai Budde氏がいないんだ?このイベントは、普段マジックに多大なる貢献をしてくれている多くのプレイヤーへ感謝を示す、貴重なチャンスだったはずだ。

 

結局、ウィザーズ社はマジックの市場を広げるために、「マジック以外のプロ」を招待する選択をした。マジック25周年というタイミングでなければ、このやり方もうまくいったかもしれない。僕たちに直接関係のあることではないのだが、それでも悲しい。このタイミングでなければ、ウィザーズ社がプロモーション・イベントとしてハースストーンの有名配信者であるAmaz氏を招待したとしても、大半のプロがそれを受け入れ、サポートしたはず。ただ、今回はタイミングが悪すぎる。寄付によってマジックに対して貢献してくれたプレイヤーを財政的にサポートでき、かつマジック25周年を祝うイベントで、ウィザーズ社は「ハースストーンのプロを売り込む」ことにしたんだよ。多くのプレイヤーが自分のことではないのにも関わらず、ウィザーズ社が「マジックのプロプレイヤーに還元しなかった」ことに対し動揺した。

 

更にプロプレイヤーを動揺させたのは、ウィザーズ社がここ数年、プロへの報酬を削減していることだ。30人のプラチナ・プロが年間十分なイベントに参加していると仮定すると、大会賞金を除き、プロが得られる報酬は年間15,000ドル。数年前、ウィザーズ社はこれすらも削減しようとした。プラチナ・プロの報酬を年間15,000ドルから80%程度カットし、2,000~3,000ドル程度に近づけると発表したんだ。この発表はマジック・コミュニティーの大反発を招き、ハッシュタグ:#PayTheProsが生まれた。そして、最終的にウィザーズ社はこのプランを練り直すことを決定したね。

 

それからというもの、ウィザーズ社はプラチナ・プロや殿堂プレイヤーに対する報酬を徐々に削減してきた。プロツアーに招待したプラチナ・プロの宿泊費を負担するのは通例だったけれど、それは撤廃された。また、大会参加褒賞は制限付きとなり、6回分のみ支払われるようになった。更に最近では、ウィザーズはプロポイント制度に大幅な変更を加えた(2018-19年度より、プロ・ポイントの集計期間にかかわるルールが大きく変更)。この変更により、プレイヤー達はサイクルごとにプラチナ・プロの権利を獲得しなければならなくなったんだ。新しい制度は多少の良い面もあるけれど、結局はプロプレイヤーにとって損失が出てしまっている。

 

これらの変更が受け入れられたのは、「この削減分を大会の賞金に充てる」とウィザーズがプロプレイヤーに対して保証したから。そしてそれが、フェアであると考えたから。来月のプロツアーの賞金は、これまでで最大規模のものとなっているし、今年の世界選手権では前年度よりも多くの賞金が支払われている。チーム・シリーズでは最高のパフォーマンスを見せたチームに賞を授与したりもしている。これらの変更は、安定した収入の代わりに「大きな大会での結果」にプロ・プレイヤーの価値を縛り付けることになり、良いものとは言えないのだが、ウィザーズ社は(削減したことによる)プール金をより大きなイベントの賞に再分配している。

 

このような現状にも拘わらず、150,000ドルもの高額な賞金を「マジックをプレイしていない人物」や、「マジックを始めたばかりの人物」に支払ってしまうのはどうしてなんだ??この賞金の一部は、プロプレイヤーに対する褒賞を減らして捻出しているんじゃないか?ある意味、裏切りのように感じてしまうよ。プロプレイヤーは少ない収入でやりくりして、大会で勝つことで更に収入を得ようと努力している。でも、考えてみてほしい。プロフェッショナル・マジックの最高峰であるプロツアーでさえ、400名以上のプレイヤーに対し総額250,000ドルしか出していないのに、今回のイベントは総額150,000ドルが僅か8名に支払われるんだ。

 

ウィザーズ社がプロに対する褒賞を見直すとき、いつも「マジックのプロ制度を続ける価値があるのか?」と疑問に思ってしまう。そして、マジックのプレイヤーではなく、マーケティング外の部外者を招集して作りあげる大会にいったいどんな価値があるのだろう。雑に言ってしまえば、価値なんてない。マジックの財政面を考慮して、プロが(我慢して)マジックをプレイしても、結局状況は悪くなっているんだから。

 

 

*後編へ続く*

 

参考

【原文(TCG PLAYER.COM)】
The Silver Showcase and the Realities of Pro Magic
http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=14723&writer=Brian+Braun-Duin&articledate=6-29-2018

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